【読書記録】「開かせていただき光栄です」皆川博子

「開かせていただき光栄です」皆川博子

【評価】★★★★★

【読了日】2024/01/04

【あらすじ】

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が…解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。(Amazonより)

【感想】

小島秀夫監督の「創造する遺伝子」で紹介されていて面白そうだったので読んでみました。

海外ミステリーの翻訳物かと思うほどの18世紀のロンドンが生き生きと描写されていて、冒頭から物語に引き込まれます。
クセのある解剖医ダニエルが探偵役となって容姿端麗なエドや天才細密画家のナイジェルをはじめとする助手たちと事件を解決していくのかと思いきや、ダニエルはどちらかと言えば事件に巻き込まれる方でした。彼らとともに盲目の治安判事ジョンと姪であり助手のアンが事件解決に乗り出しますが、ジョンはアンから状況を説明してもらうだけでなく、鋭い聴覚や、手の感触などからも推理をしていくのが面白い。文字で状況を想像している我々読者もジョンの感覚はとても助かります。視点がダニエル、ジョン、事件が起こる前のネイサンと変わりながら、状況が二転三転と展開して最後までページをめくる手が止まりませんでした。
最終的に事件は解決しましたが、寂しさが残る結末でした。

作者の皆川博子さんが80歳の作品というのも驚き。
この作品は三部作の1作目で、3作目は2021年に刊行されていました。ということは皆川さんは90歳近くで書かれたということですよね…。ただただすごい。

☆以下結末に関するネタバレあり☆

とにかくネイサンが助かって良かった…。

才能もあり努力もしてきた少年が、貧しさや純真さが原因でエヴァンズのような悪人に利用されて酷い目に遭い続けるのを見るのがつらくてつらくて…。夢を叶えられずこんな形で殺されてしまうなんて…とショックだったので、生きていたのが分かった時は嬉しかったです。やはり懸命に生きる少年は報われてほしいです。

エドとナイジェルがダニエルの元を去ってしまい残念に思っていましたが、「エドワード・ターナー三部作、ついに完結!」と3作目の紹介に書いてあったので、まだお別れではなさそうで安心しました。

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2024年 2冊目

開かせていただき光栄です?DILATED TO MEET YOU?

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